アマチュア無線


世界の噂話


口利二 無責任編集。

TOKYO Chanel USO 800号





処変われば品変わるとはよく言ったもので、世界を流れてみると、政治体制、経済体制、人種、宗教、気候、風土が異なる以上、物の見方、考え方が日本とは全然違う結果科学的遊びであるアマチュア無線に纏わる質問も、話題も噂話も日本と全く違う事になる。 あまりの奇想天外の質問に最初聞いたときはその質問の意図が飲み込めずに苦労したりする。
日本いただけでは想像できないだろう・・そんな外国でのお話を集めてここにお届けしよう。





1」 JAは何故コンテテストではコールサインを変えるか?

時は1991年、処はCA州のバイセリアのDXmeeting、いきなりこの質問をWのハムから受けたときは、その質問の意味がよく分からなかった。
「だってコンテストになるとJAは皆JA1Y**とか、JA8Z**とかコールサインを変えた局でバンド中がいっぱいになるではないか・・」
確かに・・言えてる・・当時はまだJAではゲストop制度が法的に成立しておらず、コンテトと言えば大学クラブ局のMM局が大手を振って歩いていた時代である。 彼に言わせれば今まで聞こえていたJF1MYHとかの個人局がコンテストになった途端に急にいなくなってしまって、バンド中 59+で聞こえ来るのは何故か JA何とか「ヤンキ〜イ〜**」とか言う局ばかり・・てっきりJAはコンテストの時はY**とコールサインを変えてからコンテストへ参加する決まりに成っていると思っていた。のだった。








2」 究極のショート コールサインは何?


Wのコンテスト連中と話していると、彼らは実にコンテストに合法的に勝つために、ありとあらゆる事を考えている事が分かる。 コンテストをやれば誰もが短く分かり易いコールサインが欲しいと思うのは当然だろう、ではコールサインは果たして何処まで短く成るのだろうか、彼らと議論した時の事だが・・・

W1AA これは普通の1x2であり実際に発行されている、となれば次は
W1A の 1x1である。 これも最近特別局で発行された。では
W1 これはNo サフィクスであり発行可能なのはJAでも8N2000等で立証済みである。
そしてUSAだからできる論理的な最短コールサインは
W,K,N
の3コールである、何故ならUSAはこのコールのITU割り当てを全部持っているので、論理的には発行可能である。但しいきなり「This is QRZ contest?」とやってコンテストに有利になるかはいささか疑問であるが・・ま〜法論理の遊びとしては楽しい。

* 余談ながら今回の8N2000局登場でJAでもNo サフィクス コールサインが発行可能なのは元々JARL要請で始まり郵政省公認済みのコールサインであるから、短いコールサイン希望の局はこれを良き前例としてデンカンへ「指定事項変更届け」を出して8N2000を前例として

「JH1」等のサフィクス無しの呼出符号への指定変更を受ける事が可能と思われる。





3」 FCC オバーパワー局 捕物帳。

アマチュア無線の歴史はオーバーパワーの歴史と言っても良いだろう、しかしフェアーを条件に競争するのが大好きで、「本音と建前を使い分ける事をズルイ」とみなす国民性のアメリカ人のオーバーパワーに対する目は冷たい。
さて、私が実際会った人でもFCCのお世話になった人はいる。

☆ K6VSS

もう30年も前に7Mhz 6el Yagi なんてJA2BAYも真っ青のトンでもない!事をやった、やる気ムンムンの局で当然ながらリニアも自作、その7Mhzの強さは抜群で自ら「W6 Very Strong Station」と名乗ったくらいである。

DXer雑誌59でJH3DPBにより一度JAへ紹介されたが、彼はコンテスト最中にFCCに踏み込まれる、証拠としてリニアの球、電圧、電流計の写真をバシバシ取られる。 彼は「無断家宅侵入罪」で訴えてやる! と、対抗するがFCCは一歩も引かず「お前がその気なら我々は最高裁判所まで徹底的に戦う、そして二度と無線ができないようにしてやる」と対決宣言する。ここに至り彼は素直に電波法違反を認め、FCCの「免許剥奪5年」に従う。そして数年後再開する、コールサインは新しく制度基でK6UAになった、その彼とは今は3,8Mhzピカイチ局Delの事である。
当然再開するまでには心の葛藤があった事だろう。 それを吹っ切ってカムバックした彼のシャックにはこの時の裁判の判決文がそっくりエッチングで壁飾りとして残されている。判決文曰く・・「我が合衆国では1kWしか許されていないにも関わらず、お前は4kWも出して運用して・・」


☆ W7SFA

永遠の名著JA1KSO/誠文堂新光社「世界のアマチュア無線局」のグラビアに紹介されたパンザマスト+ANTがスッタクごと一緒に回転する、と言えばJAには分かり易い、この想像を絶するタワー事ビッグバルサーと伴に紹介されたWA州の局である。 私が最初に訪ねたいわゆるBig Gun局でもあった。(20年前にこれを見てJE2YRDの建設を決意した.hi) 事前に尋ねたシアトルのW7PHOによれば「山の中のうるさい奴」・・そうだろう・・W7PHOみたいなNet局にとっては2日間Netが丸つぶれになるコンテスターは迷惑千万な局だろう。hi

彼の処にヘンリー4Kが有ったがその横にはその数倍の大きさのラックにFCCでご用に成ったとの噂の??への16Kの様に見えるリニアのラックがドデーンと鎮座していた。
FCCは実際どのように取り締まるのか聞いてみた。

●まずやはり最高パワーとビーム方向が一定化するコンテスト運用中を狙う。
●ANTのビーム方向に合わせた数km先の処へFCCの電界強度測定車を配置し、最高値を測定記録する(A班)。
●記録後、別のB班がシャックへ踏み込む。(この時、踏込時に瞬時にスライド変圧器等でリニアの電源の高圧を下げて証拠隠滅を謀る局が多い)
●そこで、A班と連絡して電界強度が急に下がったならば、同じレベルになるまでB班がリニアの高圧を徐々に上げていく、電界強度が前記のランニング中の最高値と合致したところでのリニアの電圧、電流を測定してこれを動かぬ証拠とする。

なお、後年彼ゴードンはコールをW7FUと変えるが、その後巨星W6AM,K2GL(N2AA局の持ち主)の後を追う様にサイレントキーしてしまう。

なお、後で分かったことだが、この時実はFCCはW7PHOの処にも検査に行っている。何故なら当時彼はPHO Family Hourと言っていわゆる14,226KhzでNetのMCをやっていた。 しかし彼が網羅するAsia、太平洋の局を聞こえない、飛ばない内陸のW7,W0のアメリカの局がいたのだ。 そこでネタミマンは「彼だけがAsiaへ飛ぶなんてオカシ〜イ、キット違反局に違いない」とFCCへ滴れ込んだのである。(何処でもいるんですね〜この手のセコイ ヤカラは!)

しかし、W7PHOの強さの秘密はロケーションであった、緩やかに太平洋に下っていく丘の途中、おまけに目の前は湖、そして地面は山からの地下水で何時も湿っている。 これなら4-1000で十分です。FCCも私も十分納得です。
逆に、だからこそ彼W7PHOも飛び、耳に自信があるAsia、太平洋のNetを始めたのです。(WA6IVMがJA大好きなのも、JA8FCGがカリブNet大好きなのも同じ理由です。 hi)





4」 Wのオーバーパワーの最高は48kW!

だいぶ以前の話しだがJA-CQ誌にも「Wで48kWのオーバーパワー局捕まる!」と、載ったので、記憶してる人がいるかもしれない。
しかし、誰でもが直ぐ思うのは「48kWって一体どんなリニアアンプを使ったの?」だろう。だって事実上パワー入れ放題のJAだって私が知っている電力級アマチュア無線局の大型アンプはコリンズ 208U-10(同型)の終段を4CX15,000へ改造して、電圧を7kVへアップすると、3A流れるので21kW入力がOutは14kW位かな〜・・ 辺りが精々である(JAに数台?)・・それにしても 48kWとはBig one America も又頑張った物である。

しかしアメリカを車で旅するとそれを可能とする背景が段々分かってくる。
アメリカは実にAM,FM放送局が多いのである。またFCCの認可も簡単で学生が学校から帰ってきて夕方から放送を始める様な局まで放送局の免許が下りる。従って田舎の町を通過する毎に、また音楽ジャンル毎に無数に局がある感じさえする。
それゆえに放送局同士の競争・淘汰もまた激しい・・その結果「For seal AM RADIO Station]なんて看板が良く目に入ってくる。 そう・・実はこれが供給元なのである。

50kWを目指したのならば、このようなAMの1,500Khz 50kWの中波の放送局をANTごとそっくり買い取るのである、この様な局は元々田舎の町外れにあるので土地はメチャ安、ANT Towerは分解することを考えれば相手はタダでも譲渡したいはず、従って局舎を含めて安ければ1千万以下で入手できる、で・・ちょっと電力級アマチュア無線技師の腕で終段回路をいじれば、1.8M/3.8Mhz SSB アンプに改造するのはラジオライフなんか無くてもイトモ簡単、簡単!。 かくして3.8Mhz50kW局が誕生するのである。

しかし、色々後日談を聞いてみると、やはりこのようなヤカラは真の無線友達もいなく、一人強力電波を出し、個人ジャミング局化することにより、また皆の嫌われ者になることによって自分の存在価値を示そうとするところは..JAの7Mhzのヘロヘロ・オジさんと何処か精神構造が似ていますね。





5」 優しすぎる QSL MGR.

K3ZO Fredの家でDXerパティーが有って、有名なQSL-MGR W3H**に会ったとき:

「俺は一度に異なる自分callのcardを何枚も請求される、とその都度logを開くのにヘキヘキしているが、お前は何十局の異なる局のMGRやっているだろう、カード請求が毎日来ると思うが・・何十局のlogをどうやって素早くcheck処理しているの?」

「そんなの局 別にいちいちlog等見ている分けないだろう、そんな事していたら幾ら時間があっても足りないよ、来た局にそのまま返しているよ。この方が速くて、もらう方もハッピーだし、出す方もハッピー お互いがハッピー さ! で・・これで何か不都合があるの?」

「mumumu・・・・・」




6」 9Yのパワーは無制限?

カリブでもアマチュア無線では南米にカウントされることからコンテストで人気が高いトリニダード・トバコ、5年連続のWW-CW/SSB両部門世界1位のあのN6AA Dickの9Y4VTはコンテスト界における永遠の金字塔だろう。

さて、9Y/JA2EZDの免許をもらった時気が付いたのだが免許の項目に周波数帯、電波形式の項目は記入されているが「出力電力」の項目が無い。地元の局に聞いてみた。
「Good question! 実は我々もそれに気が付いているが誰も質問していない、何故ならば免許状に電力上限の指定が無いということは制限が無い・・すなわち電力は無制限に許されると我々は解釈している、従ってそれ以上はあえて誰も質問しないのだ」

日本でもEMEの2m 500W免許状に仰角指定がないので、GW-で500WでQSOができると喜んだ局がいたが、後日シッカリと「水平発射禁止」の訂正免許状がお役所から届いたとの話しがある。




7」 VP2Eは本当にパワー無制限?

パワーの話しが出たので、本当に5kWがもらえる国の話しをしよう。
VP2Eで免許をもらった時の事だ、実はここの免許状がシンプルで一番好きだ。
端的に言えば、記入されているのは:

VP2EZD HIROO YONEZUKA
All Amateur Band、All Mode、 1.5KW

実に簡単、明瞭で分かり易い、 QRV中 QSYをおねだりされた時 「エート ここは WARC Bandの10M SSBは出れたっけ?」等といちいち気にする必要が無い。

でRadio Anguila で免許申請の時のお話:

「処でパワーはどの位いただけるのでしょうか?」
「君はどの位欲しいのか?」
「恐れ多くも 5kWなんていただけるのでしょうか?ARRL Contestで You are 59-5000 って一度やってみたいのですが・・だめでしょうか・・御役人様?」
「ん・・出せないことも無いが・・では今回君は5kWのリニアを島へ持ってきたの?」
「いいえ月並みのデントロンの1kWリニアです」
「では,今回は1.5kWと言うことで、 希望の5kWは君が5kWリニアを持ってきた時また考えよう」

流石!” 敵もさるものヒッカクもの” なかなかやる。

JAではHF+6mの半導体kW リニアが大流行、そこで、大きすぎてウサギ小屋で邪魔に成った への4〜8番、青箱、赤箱 等御持ちの方 誰か寄付してくれませんか?私ぜひ VP2Eへ持ち込んで、一回 コンテスターの夢としてARRLで「UR 5995K」 と打ってみたいのですが・・・




8」 Gの160mは100W制限?

日本にCW不用の電話級が生まれた後、21Mhz10WのJAの電波が世界中へ飛んで行った、この時世界を風靡した「Tokyo 10W/Japanese 10W」と言う言葉が生まれた、これは戦前からあったCarifolinia kWと同じような意味で実動のパワーと全然違うとの意味である。(確かJA3の某米屋さんハムが10W免許でDXCCのオーナーロールに成った快挙の記事が昔59へ出たことが有ったような・・・)

さて、カリブのバルバドス/8P(地元ではバーベードスと発音している)で免許をもらった時の事である。ここは住民が8P6**でビジターは8P9**のコールサインが指定される。私が行った時はコールの自由選択ができなくなっていて、空いている処から順番に発行していて私へは8P9ACが降りてきた。 で、もらった免許状を良く見ると160mは100W出力ではないか? これはタイプミスではないかと思い尋ねると「嫌 これで合っている、ご存知の様にバーベードスは英国の植民地であったので英国の法律をそのまま借用している、英国本土の160mが10Wなので我国もそれに準じているのだ」 エ!!ではあの有名なSuper Lowbander GI3OQRも10Wで160m DXCC完成させている事になるの!!それは21MhzのTokyo 100Wよりスゴイ・・すごすぎる。 これが本当ならあのGTFも真っ青だろう。

何処かの雑誌の160mコラムで、GI3OQRの160m リニアは3-500Zx2と紹介した記事があったが、この時点ではそれはGにおける違法出力と考えられる。 その後Gでも法が改正になり、さすがに100W制限では無くなった(現在は 200W?)

でも、ARRL Contestの時本当にUR 59910 って送っていたのかな〜? んん そうか All JA Contestの事を考えれば10なる数字は単なるコンテスト時に自動的に送る「 接尾語 」に過ぎないのか・・






9」 Romeoは5Aでどうして捕まったのか?


 歴史に残る詐欺DXpedi師として有名なRomeo、P5RS7などと訳の分からぬコールサイン、それの片棒を担いだ有名な八王子のSuperOM,など話題性抜群で一時は日本の、イヤ世界のDX界の話題を独占したロシア人である。


 JUL.2001 LZを旅して首都のソフィアでRomeoと一緒に5Aへ行って捕まったLZ2UUの話を聞く事が出来た。

 当時はまだ両国とも共産主義の同盟国、Romeoは主に社会主義国家からQRVして新しいDX世界のヒーローとして迎えられようとしていた。
 そして彼が狙ったのは当時のレアーカントリー5A(リビア)であった。 そのQRV計画LZ2UUが同行することになった。
 無事にトリポリのホテルに宿泊した彼らは部屋に,無線機をセットするが、従業員に怪しまれ通報される。(通常社会主義国家の場合外人が泊まれるホテルは限られており、ホテルの受付の中に公安警察がまぎれているのは常識である)。
 警察は免許の提示を求めるが,Romeoは提示できない、そこで警察はしかるべきところから免許をもらうまで設置は出来ない旨通知するが(日本でもあったように受信も不可),結局彼は免許取得できないまま警察の警告を無視して運用する。
 結局、再度警察に踏み込まれて逮捕される、そして2日間取り調べられて(お泊りは留置場であり噂されたような刑務所ではない)その結果当局より「永久追放」との処分を受けてリビアを追い出されたのであった。

 この事件であまりにも有名になりすぎてしまった自分のコールサインに困ったLZ2UUはその後コールサインを変更するハメになったのである。





左の記事はモービルハム 1994−JUNの DX DIGEST edJH1ORA
の伝える,Romeoの記事である。

この時英語のまだ不自由なRomeoをARRLまで連れて行ったのがロシアからの移民でアメリカ国籍を取得した通称Red-Edと言われたNT2X Edである。
 Romeo、Edとも日本へも来たことがありJAでおなじみの局もあろう。
 なお、LZ2UU、NT2XともしばらくはDXの世界から離れざるを得なかったのは言うまでもない。

なおRomeoのXYLはNY ロングアイランドに別荘を持っている。
 



     NT2X Hiroo KU2M (N2AAの3.8Mhz OP)